vol.8
●マイノリティ×マイノリティの相乗効果
Fat Tuesday Air Line
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ハーレムとひとことでいっても、そのエリアはかなり広い。
セントラルパークの北側110丁目から155丁目までをハーレムと呼ぶが、
このエリアのなかには、大きく分けて3つのエリアが存在する。
まず、セントラルハーレムと呼ばれる真ん中のエリア。
ここには黒人が多く住み、目抜き通りの125丁目には黒人音楽の殿堂・アポロシアター
もある。まさに中心地とでもいおうか。
そしてLexington Aveより東側は、スパニッシュハーレムと呼ばれるエリアで、プエルトリコ系が多く住む。看板なんかも急にポルトガル語?スペイン語?、そんな感じの言葉が増えてくる。
Amsterdam Ave.より西側はドミニカ共和国出身者の多いウエストハーレムと呼ばれるエリア。
これらは地下鉄にのってみるとその住み分けが良くわかって、本当に面白い!
またコレは別の機会に書くとして、
とにかく、ハーレムは黒人が住んでいるといっても、
いろんな人種が住み分けているのだ。
アフリカから来た人、カリブから来た人など
一見同じように見えて、実はかなり多様な人種の宝庫だといえる。
しかもそこにいろんな宗教が絡んでくるから、ややこしい。
黒人がみんな歌がうまくて、ダンスがうまくて、
みんながみんなクリスチャンでゴスペルを歌っている、
なんて思っていると、大恥をかきかねないのだ。
さらにそこには日本人、それも女性が結構住んでいたりするし、
中国人やイタリア人なんかも時々見かける。
当時、ハーレムウォーキングツアーに参加したとき耳にした話では、
「ミッドタウンも家賃が高くなっていて、若い人たちはブルックリンなどのマンハッタン以外のエリアに流れるか、比較的まだ家賃が安いハーレムに住み始めている。
でも、今一番ハーレムに越して来ているのは、白人のゲイカップルだ」と教えてもらった。
へぇ〜。
白人のゲイカップルか〜。
ダウンタウンのほうへ行けば、うっとりするほどかっこいい男の子達が
手をつないで歩いていたり、カフェでにこやかに笑いあったりしている姿を良く見かけるが、ハーレムにもいよいよ登場か!?
当然、昔からハーレムにもゲイはいただろうし、普通に暮らしているだろう。
でもハーレムは黒人居住率がかなり高い街だ。
そこに白人の、ゲイに対して理解のあるNYでもやっぱりまだどこかマイノリティな存在であろうゲイという人種が入って来ているという事実は、妙に私の心を刺激した。
数百年前からマイノリティだった黒人のテリトリーに移り住む、
社会的マイノリティだといわれるゲイの若者達。
マイノリティという言葉には、ちょっと消極的な悲しい感覚が付きまとうけど、
そこにゲイという感覚が加わると、ちょっとビビットな感じに変わるのが不思議。
自由でわがままで、山椒は小粒でぴりりと辛い、そんな感じ。
ハーレムに住んでいる黒人の人々は、この新しい訪問者をどのように迎えているのかはわからないが、白人であるかないかにかかわらず、
ゲイの人々は、普通の白人が怖がるハーレムに(現に夜イエローキャブに乗ったら、白人ドライバーにハーレム行きを拒否された)、
ひょっこり華々しく現われて、開発が進むこの場所に、
“住人になる”という立場で、バリバリ風穴を開けてくれたに違いない。
私はそう思っているので、
ぜひ今度、ハーレム在住の白人ゲイカップルの方々、
私にその暮らしぶりをのぞかせてください。
「トーチソング・トリロジー」のハーヴェイ・ファイアスティンのように、
ウサギちゃんのふかふかスリッパをはいて、
出迎えてほしいと思っています。